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東三河のキラリ人

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東三河のひとまち百景 東三河マーチング委員会代表 金子 徹さん

豊橋市 芸術文化部門

 東三河の街や祭りのイラストを通じて、東三河の人々に地元の良さを再認識してもらい、それを東三河の人々に発信してもらうことで地域を元気にしたい。東三河各地の風景を「東三河のひとまち百景」として水彩画にし、絵葉書の配布や水彩画の展示を通じて地域の活性化を目指す活動をされている東三河マーチング委員会代表の金子徹さん。

 今回、東三河マーチング委員会の運営会社である豊橋製版株式会社にお伺いして金子さんからお話を伺ってきました。

「マーチング」とはどんな活動ですか。

 一般社団法人マーチング委員会理事長の利根川英二さんが東京・湯島本郷で始めたのが最初です。まち並みのイラストを描いて、「自分のまちにはこんないいところがあるんだよ」とまち自慢をする。また地元のまちのイラストを見た人に地元のよさを再認識してもらい、そこからまちおこしにつなげていこうという活動です。

 利根川さんのマーチング委員会の活動を知った全国各地のまちづくりの志を持つ仲間がマーチングの活動に参加して現在では全国41のマーチング委員会が活動しています(※平成25年1月現在)。

金子さんが東三河マーチング委員会の活動を始めたきっかけを教えて下さい。

 2009年頃、東京に赴任していて、ときどき豊橋に帰ってくるとしみじみ豊橋の良さを感じるようになっていました。それと同時に豊橋の街がだんだん、元気がなくなっていくのを見て、何とかしたいという想いを抱くようになりました。そんなとき出会ったのが湯島本郷マーチング委員会の絵葉書です。

 週末に秋葉原から湯島本郷を町歩きしている時に、湯島本郷マーチングの絵葉書を目にしてとても印象に残り、その後も気になっていました。そこにちょうどNHKの番組で「湯島本郷マーチング委員会」のことを取り上げられていたので、早速社内で話題にしました。

 後日、代表の利根川英二社長に会いに行き、利根川さんも自分の生まれ育った街が元気をなくしていくことに危機感を持ったことや、自分の生まれ育った街はこんなにすばらしい街だということを全国に自慢し、街が元気になってくれたらと思い活動を始めたと聞き、自分もやってみようと思いました。
 
 東三河豊橋市で創業し、今年で46年になる当社が地元に対しての恩返しの意味を含めた活動に、社長も賛同してくれて「東三河マーチング委員会」はスタートしました。

それから豊橋に帰るたびに街の景色の写真を撮り、イラストレーターに写真を水彩画にしてもらいました。それをポストカードにし、10作品ほど作ったところで東京で開催された豊橋産農産物を扱った物産展の会場でお客さんに無料配布しました。東京には東三河出身の単身赴任の方や学生さんがけっこういらっしゃって、「懐かしい」ととても反響があり、活動の手応えを感じました。

その後、作品を次々に発表して活動を本格化させていくわけですね。

 水彩画をたくさん作っているうちに色々なところから、絵葉書が欲しいとか、こういう水彩画が書けないかとかリクエストが来るようになりました。

 そうした中、ガンっと突き進むきっかけになったのは3.11の東日本大震災でした。あれで東北の人たちは地元の風景を失ってしまいました。

 津波が襲った東北の街を見て、もし東海大震災がきたら、東三河の街の風景も失われてしまう、イメージだけのものになってしまうという危機感が募りました。そこからですね。東三河の街の風景を残しておきたいという想いに加速度がかかったのは。もし、東三河の風景が失われてしまうことになっても「昔こうだったよね」と言えるようなものを残しておきたい。人々が生活を営んでいた街が失われてしまい、その風景は次の世代の記憶からなくなってしまうけれども、街や祭りなんかでも絵に残せば、それを見て「こうだったよね」ということができると思うんです。

「東三河のひとまち百景」の水彩画はどのように作られるのですか。

 まずは、水彩画にしたい写真を撮りに行きます。平日は仕事があるので撮影は基本週末ですね。ひとつのテーマで最低20~30枚、多いと50~60枚撮影します。
 
 撮影した写真の中からふさわしいものを選別し、イラストレーターと打ち合わせをして水彩画に起こしてもらいます。

 例えば、豊橋駅前の風景であれば、市電が走っている風景を写真に収めるのですが、市電がメインではなくて、市電を含めたまちの景色なので、人が立っている目線で、地元の人が「あ、この景色懐かしい、見覚えがある」と思ってもらえるような水彩画になるよう心がけています。

東三河マーチング委員会の活動はほとんど金子さんお一人で進行されているそうですが一方で会社からのバックアップも受けていらっしゃるそうですね。

 バックアップというよりも、この「東三河ひとまち百景」は会社あげての取り組みと位置付けていますから、先ほど述べたようにイラストレーターに写真を元に水彩画を描いてもらうコストをはじめ、展示用の什器なども負担してくれて、原画が出来たらポストカードやポスターのデザイン・印刷も社内でやってもらっています。

 また、最近は会社の若手である小池さんも水彩画につけるコピーを考えてくれたり、写真などの資料集めをしてくれるようになって助かっています。

 それに他部署の方も積極的に「東三河ひとまち百景」をPRしてくれています。

 豊橋本社内でポストカード等も販売しているコーナーも設けていますので、近くに来たときには覗きに来てほしいですね。

「東三河ひとまち百景」の作品は営利目的でなければ、無償で提供されているそうですね。

 そうです。記憶にある風景、どこか懐かしいイラストによって地元東三河のいいところを紹介し、まずは地元の人に地元の良さを再認識してほしいという強い想いがあります。 

 一番の根本の問題はそもそも地元の人が地元を知らなさ過ぎることだと思います。外にPRできるだけのいいところがたくさんあるのに東三河に住んでいる人たちでも自分たちのまちの良さを知らない。それでは発信することが出来ません。だからマーチングの「東三河ひとまち百景」を見てもらって「あっ、東三河にこんないいところがあるんだ」ということをまず地元の人に理解してもらう。そうした上で実際に田原や豊川、少し足を延ばし奥三河にも出かけていってもらって「ここよかったよ」って感じたところを外部に発信してもらいたいと思います。 

 そこからさらに外から来てくれる人に対し、東三河全体でおもてなしができるような雰囲気作りができればいいなと思っています。そのためのお手伝いになるのであればどんどん使っていただきたいと思います。

具体的に「東三河ひとまち百景」の作品はどういったところに提供されてきましたか。

 代表的なところではロワジールホテル豊橋さんのロビーにポスターを飾って頂いています。写真よりイラストのほうが興味を引きますよね。ホテルを利用する外国人観光客にも好評だと聞いています。
 
 その他、地元郵便局ともタイアップしています。東三河に114局ある郵便局の名刺の裏にイラストを使ってもらっています。局長さんたちは自分たちの地域に思い入れがあるので、同じ市町村でもエリアごとに使うイラストを変えてるんですよ。2012年の12月には1000シート限定で切手も作りましたが、こちらも好評ですぐに売り切れたそうです。

今後の活動をどのようにしていきたいと考えていますか。

 現在は東三河8市町村のうち豊橋、豊川、田原、新城のイラストを集めた冊子ができあがったので、残りの4市町村の冊子が出来るようイラストを作成中です。最近では市町村の役場の方が写真の提供をしてくださったりします。
 
 また、東三河には小さなあまり注目されていない歴史的な場所がたくさんあるので、そういったところを取り上げていきたいですね。あとは歴史的な街道をテーマにしたのシリーズの作品も作れたらいいなと思っています。



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「自分の生まれ育ったまちを元気にしたい」インタビューを通じて金子さんの熱い想いが伝わってきました。
 東三河マーチング委員会では東三河各地で「東三河ひとまち百景」の作品の展示を行っている他、facebookを通じて情報発信を行っています。

 東三河マーチング委員会 facebook  http://www.facebook.com/higashimikawa

※記載内容は取材当時のものです。

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