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東三河のキラリ人

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50歳からのチャレンジ 棚田を荒廃から守れ 小山舜二さん

新城市 技術部門

❖新城市四谷地区、鞍掛山の斜面に420枚、3・6ヘクタールの棚田が階段状に連なっています。
美しい景観が平成11年7月、日本の棚田百選に認定されました。ほかにも農村アメニティ・コンクール農林水産大臣賞、豊かな自然セレクション100など数々の賞を受賞。
また一昨年(平成22年)10月には、名古屋で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)公式エクスカーション(体験型の見学会)の里山紹介コースとして取り上げられました。
今でも年間一万人の見学者が訪れる千枚田ですが、約二十年前、減反政策や過疎化・高齢化により存続が危ぶまれ、荒廃の道をたどっていました。
今回は、その危機をどのようにして乗り越え、再生させたのか。また、棚田を核とした地域の活性化への取り組みについて、先祖から受け継いだ棚田を守るため情熱を注ぎ保存活動を続けている小山舜二さんを訪問しました。

はじめに、保存会立ち上げの動機を お聞かせください

昭和四十八年までは1296枚あった田んぼが、国の減反政策などで平成元年には373枚にまで減少した。
先祖の遺産が年々失われていく現実が辛かったし、何とかしたかった。そこで50歳の誕生日を機に、公務員として一応安定した生活もできるようになったので、何か地域にお返しをしたいと、保存活動を仕掛けた。

まず、どのような取り組みから始め られたのでしょうか?

平成6年に「わかしゃち国体」の山岳競技がここの近くで行われてね、競技の参加者や関係者、つまり全国の人たちに見てもらおうと〈やまびこ農家ギャラリー〉で千枚田の写真展を開いた。
それ以降、東京都美術館や愛知県美術館など全国の写真展に出展し機会あるごとに日本の原風景「棚田」をアピールしたね。

保存会の立上げには苦労されたと聞 いていますが?

作業性、生産性の悪い棚田を整備するために、これからもずっと保存・保全していくために何がベストかって考えたら組織を作ること、つまり保存会を立ち上げることに思い至ったわけ。
そこで地元の10人に声掛けしたが、保存会は必要ないと理解が得られず、10人全員が反対した。
しかし何回も何回も話し合いを繰り返して、ねばり強く説得したところ、名前だけでも作ろうかということになり、平成9年1月に念願の「鞍掛山麓千枚田保存会」が発足した。と同時にそれまでは耕うん機もみんなで協力して(田へ)持ち上げる状態だったのが、「ふるさと・水と土ふれあい事業」の対象に選んでもらい、その事業で作業道が完成。農作業もびっくりするほど楽になった。
また都市との交流を図る目的で「ふれあい広場」や「ぼっとり小屋」「水車小屋」などの施設が整備された。すると、街から大勢の人が訪れるようになったよ。

小山さんの熱意が四谷の人たちの心 を動かしたのですね。次に保存会の活 動についてお聞かせください。

平成十七年、愛知万博に併せて全国棚田(千枚田)サミットを旧鳳来町で開催。
サミットでは、育農のからみで棚田を校外学習の場にしている地元の小学校の子供にも出演してもらった。連谷地区挙げてサミットを盛り上げられたし、連帯感が深まったね。
毎月〈四谷の千枚田だより〉という情報誌を発行したりとか、都会と四谷の人の交流のために出来る限りのことをしてきたつもり。
年中行事としては六月に「お田植え感謝祭・みんなで灯そう千枚田」を開催している。去年は東日本大震災の被災地の復興を願い、ろうそくで「ガンバロウ日本」の文字を描いた。鎮魂のイベントとして開いたんだけど、口コミで広がり多ぜいの人が訪れてうれしかった。
他にも調理師の卵の豊橋製菓専門学校生の実習受け入れをしてきた。学生たちには「食の原点とは何ぞや」をテーマに、田植え、稲刈りを体験してもらった。稲はちゃんと草丈を測定してはざ掛け(乾燥)してその後、地域の特産として五平餅を作らせるんだ。彼らは眼を輝かせてやっているよ。

では最後に、今後の棚田にかける期 待を教えてください。

「連谷お助け隊」という地域の耕作者ではない若者たちが、平成17年度の棚田サミットの成功のために立ち上がってくれた。
それ以来23人の若者が地域のことをみんなやってくれる。700年以上の歴史ある棚田は小さい村の人と人のつながり、つまり地域の絆なんだよ。
実は今「文化財」(重要文化的景観)の指定を目指して準備しているところ。地域の宝であり誇りでもある棚田をいかに生かすかを考えていろいろと発信していきたいね。

出典

「キラッと奥三河 ―人・物・文化・企業―」
No.17 50歳からのチャレンジ 棚田を荒廃から守れ 小山舜二さん
訪問日 平成24 年3 月6 日
訪問者 新城設楽山村振興事務所 環境保全課 河合、加藤

※記載内容は取材当時のものです。

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